第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「シャンクスが止めてくれた時、私は女の子をレイプした男達だけでなく、彼らの仲間や周辺にいた20人近い人を殺めていた。無意識に・・・」
怒りで我を忘れたクレイオは、まるで悪魔が乗り移ったかのように剣を振り回していたという。
もしシャンクスが現れなければ、クレイオ自身が殺されるまで人を斬り続けていただろう。
「自分が弱い人間だということは自覚している。怒りという感情に支配された時、私は人を殺す以外の選択肢を取ることができない」
そしてそういう時に思い知らされる。
罪を赦すというのは、ただ怒りをぶちまけるよりもずっと難しく、つらいことなのだと。
罪もないのに殺されようともそれが出来た母は、自分よりも遥かに強い女性だったのだと。
「シャンクスが言った、罪を犯したことのない人間はいないという言葉・・・あれは私を慰めるために言ったんじゃない」
クレイオはゾロの腕に抱かれたまま、悔しそうに唇を噛んだ。
「この世界の全ての人間が、大なり小なり罪を犯している。そして、その罪の大小は、人の価値観や倫理観によって違う。私が自分の基準で誰かを裁いていいはずがないんだ・・・」
だから、全ての人を赦せる強さを持て、ということ。
「私はシャンクスが教えてくれた剣術まで使って人を殺した。どんなに神に懺悔しても、この罪は決して浄化されない」
自分に足りないのは、赦しの心。
他人の非を受け入れつつ、自分の正義を守り抜く。
自分にとっては“非”でも、その人にとっては“正義”なのかもしれないのだから。
魔女狩りについて色んな文献を読んでいくうちに、それが人々の心に安穏を与えている一面もあることを知った。
生け贄
供犠
身代わり
人柱
世界には色々な形で、他人のために犠牲になる人々はいた。
自ら進んでそうなる人もいた。
もしかしたら・・・母は自分から魔女として死ぬことを選んだのかもしれない。
だとしたら本当の被害者は、怒り狂った少女に殺された村人達だ。