第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
あれから15年。
本当に色々あった。
魔女狩りに救いを求めた村人達が可愛く思えるほど、この世には残虐な人間がいるということを知った。
飢えをしのぐために人体を喰らっている人間を見たこともあった。
そういう時、思い知らされる。
自分の無力さ。
そして、結局は祈ることしかできないということ。
“お前の祈りが腹の足しになるのか?”と言われたこともあった。
“慈悲なんかいらねェから股を開け”と犯されかけたこともあった。
とにかく危険な島だったけれど、不思議と本当に危ない時はいつもシャンクスが現れ、助けてくれた。
“おれの大事な弟子に手を出すんじゃねェ”と、どんな凶悪犯罪者も怯えさせるほどの剣幕で。
「最初はこんな場所で生きていけないって思ったけれど、開き直れば人間、どこでも生きていけるものだよね」
お金が無ければ、畑で野菜を作ればいい。
畑の野菜が盗まれれば、泥棒から野菜を守れるぐらい強くなればいい。
そうやって神父や孤児たちと寄り添いながら、生きる術と力をつけてきた
「私は教会とそこに住む子ども達を守るためなら、どこまでも強くなりたいと思った。だけど・・・」
誰かを守るために剣を持つならいい。
でも時々・・・
誰かを殺すために剣を持ちたくなる。
「海軍すら介入できないほどの完全無法地帯にも子どもはいる。みんな一生懸命生きているのに、その子達を傷つける人間を見ると・・・殺したくて仕方なくなる」
3年前、12歳の女の子が集団レイプに遭った。
その子は誰にも言えないまま自殺してしまった。
日記に残された彼女の苦悩を見て、法で裁きが下されないのなら、自分が代わりに下すと誓ったのを覚えている。
だけどそこから記憶がブツリと途切れ、我に返ったのはそれから丸一日経ってからのことだった。