第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「わっはっはっはっは、それにしても見ろ、こいつの顔!!」
「・・・?」
「もろミホークじゃねェか!! アイツもガキの頃、こういう顔だったんだな!!」
ひーひーと腹を抱えている男に、彼の仲間達は呆れたように溜息を吐く。
「お頭・・・女の子を指さして笑っちゃダメでしょ」
太った男が肉を食いちぎりながら窘めた。
ベックマンは少し離れたところから傍観しているだけ。
しかし、バンダナを巻いた男はクレイオに歩み寄ると、拳銃を下げたズボンのポケットからハンカチを取り出した。
「ちょいとゴメンな。おれにも息子がいるせいか、ガキは放っておけねェのよ」
そう言いながら、返り血を浴びた顔を拭いてくれる。
赤髪の男もようやく笑いがおさまったのか、クレイオの顔を覗き込んできた。
「ずっと会いたかったんだぜ、クレイオ」
「・・・私のことを知っているの?」
「ああ、知ってる。おれはお前の親父の友達だ」
すると、太った男が“顔を合わせるたびに決闘しているけどな”と茶々を入れる。
「友達・・・私のお父さんの・・・?」
胸がドキドキする。
この人は、あの悪魔のことを知っているんだ。
「お父さんの・・・私のお父さんの名前は・・・?」
「お前の親父の名前か?」
赤い髪の男は口元に笑みを浮かべた。
「ジュラキュール・ミホーク。おれが知る中で、最高の剣士だ」
ジュラキュール・ミホーク・・・
最高の剣士───
「お父さんは・・・剣士なのね・・・」
クレイオは言い知れぬ興奮を覚えた。
だが、彼らがここに来たのはクレイオにそのことを伝えるためだけじゃない。
「さて、そろそろ本題に入ろうか」
それまでヘラヘラしていた赤髪が、一瞬にして真面目な顔に戻った。
途端、他を圧倒するオーラが彼の全身から放たれる。
「お前のしたことは許されることじゃない」
「・・・・・・・・・・・・」
「どのような理由があろうと、人が人を殺したらその償いはしなければならない。分かるな?」
でなければ、お前は魔女狩りを正当化している村人達と変わらない。