第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
海岸から神父の家へと続く、森の道。
そこを4人の男が並んで歩いていた。
途中、何軒か民家の横を通り過ぎたが、どの家も雨戸を締め切り、魔除けのためか戸口にはニンニクが吊られていた。
「陰気な島だな・・・」
先頭を歩いている男はこの島の人間でもなければ、土地勘があるわけでもない。
それでも、夜道にも関わらず真っ直ぐと目的地に向かい、迷う気配すら見せていなかった。
彼らの行く先から、風に乗ってやってくる血生臭い匂い。
男はわずかに顔をしかめた。
しばらく行くと、無数の火の玉が一軒の家を取り囲んでいるのが見えてくる。
松明の炎に囲まれた一人の少女が、大勢の大人相手に剣を向けていた。
それに気づいた赤髪の男が口元に笑みを浮かべる。
「───おいおい、島中の人間を殺しちまうつもりか?」
どこからともなく突然現れた男達に、村人達はギクリとした様子で振り返った。
身なりからして、彼らはこの島の人間ではない。
麦わら帽子をかぶった赤い髪の男は、真っ黒なコートを羽織り、長刀を腰に差している。
そして左目の上はかぎ爪で抉られたような三本傷があった。
見るからにして、普通の男ではない。
彼の後ろにいる三人もまるで海賊のような風貌をしている。
「見物人が邪魔だな」
赤髪の男は面倒くさそうに肩をすくめると、隣にいた強面の男に目配せをした。
「ベックマン、片付けろ」
「了解」
声をかけられた男は頷き、一足飛びに神父の家を囲んでいた村人達に詰め寄る。
30人近い老若男女がクレイオの処刑を見物しようと集まっていたが、ベックマンが腰に差していた銃を刀のように一振りすると、まるで見えない力で突き飛ばされたかのように尻もちをついた。
「冷やかしでここにいるヤツは、今すぐ家に帰った方がいい」
赤髪の男が明るい口調で村の人間達に向かって言った。
海賊の恰好をしているが、相手に恐怖心を与えない笑顔。
だが・・・
有無を言わせない迫力が彼にはあった。