第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
赦すことこそが愛。
死ぬ間際までそう信じていた母は、今のクレイオの姿を見てどう思うだろう。
小さな手に剣を持ち、遺伝子に組み込まれた強さで農夫達を斬り殺す。
今、彼女には村人達に対する怒りしかない。
その怒りを抑える術を知らない。
そんなクレイオを、それでも母は赦しただろうか。
“私の可愛い天使、クレイオ・・・”
“私の愛はいつも貴方とともにあります”
お母さんはどうして私を天使と呼んでいたの?
私は人を赦すどころか、怒りに任せて人間を殺す悪魔なのに。
お母さんの愛は・・・私と一緒には無い。
「何人がかりでもいい!! こいつを抑えろ!!」
もはや一対一ではどうにもならないと思ったのだろう。
クレイオの上に3人の男が飛びかかった。
もちろん、腕力で敵うはずもない相手だ。
だが負ける気はしなかったし、どう躱せばいいかも分かっていた。
不思議・・・
村人達の心の声が聞こえてくるみたい。
父の残した剣は、これだけの人数を斬っても刃こぼれ一つない。
むしろ“もっと血肉を吸わせろ”とばかりに鋭く光っている。
「なぜ、こんなガキ一人を殺せねェんだ!!」
積み上げられていく死体と負傷者の山に、誰かが青ざめながら呟いた。
正確に振り上げられた剣がクレイオに飛びかかった男3人の喉笛を切り、真っ赤な鮮血が飛び散る。
悲鳴と怒声が夜空に向かって響く中、島の海岸線では一隻の海賊船が人知れず停泊していた。