第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
それにしても逞しい背中だ。
出会った頃は、ヒョロヒョロとしていてバギーと騒いでいる少年にすぎなかった。
今では“鷹の目”ミホークと渡り合えるほどの剣の使い手になったと聞く。
いつの間にか貴方は成長し、
いつの間にか私の知らない男になった。
変われないのは、私だけ───
そんなクレイオの思いを感じ取ったのだろうか。
シャンクスは髪を洗ってくれている彼女の手首を掴むと、首をそらしてその顔を見上げた。
「お前は変わらないな、クレイオ」
「・・・見聞色の覇気は使わないで」
「使ってないさ。顔を見りゃ分かる」
ニッと笑う、屈託のないその笑顔は、かの海賊王を思い起こさせる。
シャンクスという男の前では不思議とこうして裸を晒すことができるように、心を見透かされても不快はない。
むしろ、もっと心の奥に触れて欲しいとすら願ってしまう。
クレイオは石鹸を流してやりながら、左腕があった場所に目を落とした。
傷口からみて、刃物で切り落とされたわけではなさそうだ。
まるで猛獣に食い千切られたようにも見えるが、シャンクスほどの男が易々と餌食になるわけがない。
「左腕が気になるか?」
こちらに背を向けているのに、またしても心の中を読んでくる。
“やっぱり見聞色の覇気を使っているんじゃないの”と、クレイオは口をへの字に曲げた。