第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
クレイオが住む屋敷には、10人は同時に入れようかというヒノキの大浴槽がある。
昔・・・そう、まだシャンクスが“見習い”だったころは、大人数でこの風呂に飛び込んだものだ。
「ああ・・・生き返る」
あの頃、ここで一緒に汗と垢を流した仲間達はもういない。
船長が死んだあと思い思いの道を進み、その多くは海軍に捕まって処刑されたと聞く。
湯気で白く霞む天井を見上げながら、シャンクスは左肩から10センチを残して失われた腕を温かい湯の中に落とした。
バギーは、元気だろうか・・・
物思いにふけっていると、カラカラと背後のドアが開く音がした。
「湯加減はどう? 傷に障らない?」
「最高だよ」
赤い髪から滴を垂らしながら振り返れば、タオルを巻いたクレイオが立っている。
「ご一緒しても?」
「なかなか来ねェから、大声で呼ぼうと思っていたところだ」
ニッと笑うその笑顔は、初めて会った時からずっと変わらない。
「背中を流してあげましょうか」
「助かるよ、片腕じゃ難しい」
勢いよく湯船から飛び出してきたシャンクスに、クレイオもクスクスと笑いながらタオルを外した。
そして、楽しそうに風呂椅子に座った赤髪の背中に温かい湯をかけ流す。