第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
できることなら、このまま押し倒してしまいたい。
語ることすら辛い過去など、どうでも良くさせるほど抱き潰してしまいたい。
快楽によって一時的に過去を忘れることはできる。
でも、それが本当の意味でクレイオを助けることにはならないだろう。
「今すぐお前を抱きてェが、まだ腑に落ちねェことがある」
「・・・・・・・・・・・・」
それはゾロが一番知りたいこと。
「お前はいつ、シャンクスの弟子になった?」
海賊をやっていると嫌でも耳に入ってくる、四皇の名。
ルフィの話を聞く限り、シャンクスはとても陽気な男のようだった。
だが・・・
シャンクスとクレイオが現れたあの日、四皇が放っていた覇気は、ルフィの話す人物像とはかけ離れていた。
万物を圧し潰すほどの威圧感、皮膚が裂けてしまうほどの鋭い殺気・・・
それも、ケタ違いの強さでだ。
あれほどの男が、なぜクレイオに剣を教えることになったのか。
それは嫉妬も混じった疑問だった。
「シャンクスとは、お母さんが殺されたあとすぐに出会った」
クレイオの手の中のロザリオがジャラリと音を立てる。
少女が人を殺したのは、母親の処刑の場だけではない。
悲しみで我を忘れた最初の時と違い、ただ怒りに任せて犯した2度目の殺人は、クレイオがまさに悪魔の子であることを知らしめるような出来事だった。
このままでは、悲劇しか生み続けない。
海賊ですら目を背けたくなるような惨状を目撃したシャンクスは、クレイオに手を差し伸べた。
それは彼女を世界から守るためでもあり・・・
彼女から世界を守るためでもあった───