第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
母の身体を焼く炎から飛んできた火の粉が、クレイオの頬をチリリと焦がす。
呆然としていると突然、強い力で腕を引っ張られた。
「クレイオだ!! 悪魔の子がここにいたぞ!!」
茂みに隠れていたクレイオを見つけた村人が、鬼の首を取ったとばかりに大声を張り上げた。
すると、それまで火あぶりを見物していた人々の目が一斉にこちらを向く。
「クレイオも磔にしろ!! こいつが災いの元凶だ!!」
「こっちへ来い!!」
腕が引きちぎれそうになるほど強い力で、轟々と燃えている炎のそばにつれていかれる。
真っ赤な炎の奥に、うっすらと人影のようなものが見えた。
それが母親であると認識することが、7歳の少女にとってどれほど残酷なことか。
「誰か、縄を持ってこい!!」
「確実に殺せるよう、首を絞めてから炎の中に投げ入れよう」
地面に突き飛ばされ、髪を引っ張り上げられて上を向かされる。
「なんだこの黒髪・・・気味が悪い」
「その目もまるで悪魔のようだ・・・なんて恐ろしい」
全員がブロンドヘアの村人達は、おぞましいとばかりにクレイオの髪を見て眉をひそめた。
少女にはどうしてそのような扱いを受けるのか分からなかった。
───髪の色が違うのは、そんなに悪い事なの?
“黒は光を飲み込んでしまうとても強い色・・・だから、貴方の髪は私のものよりもずっと美しい”
───人と違うだけで、ここまで傷つけられなければならいの?
“何を言われようと、どんなに傷つけられようと、その人を赦してあげなさい”
どうして・・・
お母さんはみんなと同じ色の髪で、同じ瞳をしていたのに焼かれたの?
「・・・お母さんは・・・なにも悪いことをしていないのに・・・」
私は黒い髪。
お母さんとは・・・違う。
「───ゆるせない・・・!!」
その瞬間、クレイオの中に眠る“血”が覚醒したかのように、心臓が大きく鼓動し始めた。