第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「お前がこの島にもたらした災いのせいで、私の息子は死んだんだ!!」
直径10センチほどの石が、母の額にぶつけられる。
それを投げたのは、クレイオのことを一番からかっていた少年の母親だった。
“やーい、悪魔!!”
“母ちゃんが言ってたぞ、お前が黒い髪をしているのは悪魔だからだって”
ガキ大将だった少年が死んだのは、流行り病のせい。
だが、母親はその伝染病こそ魔女のしわざだと信じ切っていた。
「返せ・・・私の息子を返せ!!」
「悪魔に身を売った魔女に死を!!」
「今すぐ火あぶりにしろ!!」
完全に集団ヒステリーと化した村人達。
恐怖や不安が人から人へと伝染し、正常な判断ができなくなっていた。
「そもそもお前がクレイオを身籠ったのは、この島で大量殺人が起こったのと同時期だった!!」
8年前、一夜にして10人以上の若者が何者かに殺された。
それはこの平和な島にとっては前代未聞の、まさに悪魔の所業と言わざるを得ない事件だった。
「しかもお前が満月の晩に通っているのは、その時の犠牲者の墓だろう!」
大人数の人間が殺された時、処女のまま妊娠した。
そのお前が、彼らの墓でいったい何をしている?
「・・・・・・・・・・・・」
頭から血を流している母は、もはや声を出すこともできなくなっていたのだろう。
彼らの“異端審問”に反論することなく、静かに群衆を見つめていた。
その瞳に人々の背筋に戦慄が走る。
「なんだ・・・その目は・・・」
はっきりと恐怖を顔に浮かべ、後ずさりをした村長。
「・・・・・・・・・」
母はとても慈悲深い瞳をしていた。
貴方達がこれからやろうとしていること、その全てを赦します・・・
そう言っているかのように。