第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
母が村人に連れていかれてから、どのくらい経っただろうか。
クレイオは自分を覆い隠していた藁を押しどけ、ペタペタと裸足のまま歩いて小屋のドアの前に立った。
シンとした小屋内。
外はまだ真っ暗だ。
“朝が来るまで決して藁の中から出てはいけません”
でも、窓の向こうを見ると、教会の方角がうっすらと明るくなっている。
朝は・・・近いのかもしれない。
「・・・お母さん・・・」
お母さんに会いたい。
どこか遠くへ連れて行かれるのなら、私も連れて行って欲しい。
“悪魔の子は殺さなければならない!!”
幼いクレイオにはまだ、“悪魔の子を殺す”という言葉の意味を理解できていなかった。
追いかければ、一緒に連れて行ってもらえるかもしれない。
小さな両手でドアを押し開けると、冷たい風がクレイオを小屋の中へ押し戻すように正面からサァッと吹いてきた。
まるで、“行ってはいけない、まだ隠れていなさい”と訴えているかのように。
「お母さんとの約束を守れなくてごめんなさい・・・」
悪い子だと、神様にしかられるかもしれない。
それでも母親を恋しがる気持ちの方が勝り、少女は首にかけたロザリオを揺らしながら、真っ赤に染まる教会の方へと走っていった。