第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「母ちゃんが言ってたぞ、お前が黒い髪をしているのは悪魔だからだって」
言葉の暴力も。
「その目でうちの子を見るんじゃないよ、気味が悪い子だねェ!」
理由のない罵倒も。
「赦しなさい、クレイオ。貴方が優しい子であることは、この母と神様が知っています」
母がそう望むから、赦しの心を持つ人間になろうとした。
小さなクレイオの世界の全ては母と、母が信じる神様と聖母様。
「聖母様のように愛で心が満たされた者は、人の罪を赦すことができます。そして、人の罪を赦すことができた時、貴方の心は愛で満たされているのです」
そしていつかきっと、そんな貴方を同じように愛してくれる人が現れる。
貴方の全てを受け入れ、貴方を守り、貴方の歩むべき道を照らしてくれる、誰かが。
「人を赦すことこそが愛なのですよ」
まだ5歳だったクレイオには、その言葉の意味の全てを理解することはできなかった。
ただ、“ゆるす”ということがとても大事であること、そしてそれが“愛”であること。
その二つが心に深く響いた。
「さぁ、これが貴方のロザリオです。一緒に唱えましょう」
“ロザリオの祈り”を───
クレイオが一人でロザリオの祈りを詠唱できるようになってから間もなく。
誰よりも神から愛されていたはずの母が殺された。
村が炎に包まれたその日・・・
クレイオは自分の父親が神様ではなく、悪魔だったことを知ることになる。