第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
するとクレイオはゾロを見上げ、苦しそうに瞳を揺らした。
「耐えられる」
「・・・・・・・・・・・・」
「だって私が知りたいのは、ミホークの私への愛情ではないから」
“私はミホークの心が分からずにいる。ここに来たのはそれを知るためなのに”
クレイオはゾロの腕の中でロザリオを握りしめた。
その祈りの道具をくれた人の顔を思い、涙を浮かべる。
「私は・・・ミホークが、私の母親を愛していたかどうかを確かめるためにここに来た」
十字架に背いた者として死んでいった母。
人知れず、巨大な十字架を建てたミホーク。
父は母のことをどう思っていたのだろう。
あの儚いまでに美しかった人を、愛してくれていたのだろうか。
「ねぇ、ゾロ・・・私の子どもの頃の話をしてもいい・・・?」
濃い霧で覆われた十字架と野ざらしの戦場跡地。
その中でクレイオを抱きしめながら、ゾロはゆっくりと頷いた。
「当たり前だ」
思えば、出会った時からお前は隠してばかりだった。
“お前・・・何者だ・・・?”
“いずれ分かる事じゃないかしら。それが神の思し召しならば”
あの瞬間すでに、ゾロの心の中でクレイオは大きな存在となっていたのかもしれない。
「そのためにおれもここに来たんだ・・・全部話せ」
後ろから抱いていれば、顔が見えねェから気まずくねェだろ。
ゾロはそう言って、クレイオを安心させるようにコツンと額と後頭部をぶつけるようにして合わせた。
お前のことを知りたい。
どうしてか分からないが、それがこの先、ミホークの弟子を続けていくためにも必要なことのように思える。
クレイオは深呼吸を一つすると、灰色の空を見上げた。
「私のお母さんは、新世界のとある島に住む修道女だった」
崩れた家の瓦礫の陰に座り、ゾロの腕に包まれながらクレイオは静かに語り始めた。