第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
処女懐胎。
聖書では、聖母は男女の交わり無しに神の子を宿したとされている。
母に聖書を読み聞かせてもらっていた子どもの頃はそれを信じ、神に選ばれた女性は一人で赤ちゃんを身籠るものだと思っていた。
だから、私の母親も一人だったのだと。
「・・・ゾロ、痛い!」
言い換えれば、私の母親は神に愛された人。
「うるせェ、おとなしくしてろ」
しかし、母は幼い子どもの目にもとても孤独な人だった。
「私は逃げないと言っているのに、貴方が抑えつけてくるからでしょ」
緑色の髪をした獣は、飢えた瞳をぎらつかせながら首筋に舌を這わせてくる。
そのヌルリとした感触に溜まらず身体を捩ると、愉快そうに笑みを浮かべた。
夕食後、ゾロは朝の言葉通り、クレイオを自分の部屋に誘った。
もちろん、相手の都合などお構いなし。
肩に担がれるか、脇に抱えられるかのどちらかを選べ、それ以外の答えは許さないと詰め寄り、クレイオが根負けするまでずっとそばを離れなかった。
結局、おとなしくついていくからどちらも勘弁してくれ、と折れたクレイオが部屋に入るなり、ベッドに押し倒したゾロ。
さらに身体の動きを封じるためか両手首を抑えつけ、首から上の至る所にキスを落とした。
「それにしても・・・私を誘うにしても、もっと別の方法はなかったの?」
「あ?」
「あんな脅迫まがいの誘い方はないでしょ。ペローナもいたっていうのに」
クレイオはゾロを睨みつけたが、ゾロの方はどこ吹く風だ。
左手でズボンのチャックを下ろしながら、右手をクレイオの口元に寄せる。
「だが、それでお前はここにいる。問題ねェだろ」
「そうじゃなくて! もっと紳士的な誘い方が」
「おい、文句はいいから、唾液をよこせ」
「・・・は?」
口のすぐ下には、受け皿のように添えられた手。
一瞬、要求されている事がよく分からず、クレイオは首を傾げながらゾロを見上げた。