第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
「いきなり何をするの?!」
「お前、いつものヤツしてきたんだろ?」
「いつものヤツ?」
「神に祈るっていう、アレだ」
ゾロが言っているのは、クレイオの日課であるロザリオの祈りか。
信仰心どころか、神の存在を全く信じていない彼にとっては、毎朝わざわざ十字架の所まで出向いて祈りを捧げるクレイオの行動など理解できないのだろう。
「うん、行ってきたけど。それが?」
「なら、なんでそんな浮かねェ顔してんだよ」
ゾロは地面にべったりと尻をつけると、クレイオの手を引っ張り、胡坐をかいた自分の股の間に座らせた。
その一連の動作が素早すぎて抵抗することもできず、気づけばゾロに背中から抱きしめられる形となる。
「ちょっと、ゾロ・・・!」
「そうだ、お前はそうやって目を吊り上げている方がいい」
「は?」
朝露に濡れた草でゾロの尻は冷たくなっているはずだ。
クレイオのスカートも土で汚れてしまっている。
まったく、朝から散々だ・・・と、クレイオはため息を吐いた。
「お前、言ってただろ。神に祈るのは、感謝を口にすることだって」
「・・・?」
“私にとって祈りは救いを求める行為じゃない。感謝を口にする行為なの”
「なのに、全然ありがたそうな顔してねェな」
ゾロの言わんとしていることがなんとなく分かったような気がした。
きっと今、自分はものすごく弱気になっているのかもしれない。
クレイオは溜息を一つ吐くと、体重を全て預けるようにゾロの胸に寄り掛かった。
「ごめん、あの時の私は格好つけてた。本当は救いを求めてばかり」
口に出してしまった方がラクになることもある。
たとえ聞いてくれるのが、人間というより猛獣に近い男であっても。