第9章 ロザリオの祈り(ゾロ+α)
朝の祈りが終わり、クレイオが城に戻るとゾロが不貞腐れた顔で畑の雑草を抜いていた。
相変わらず、ヒエラルキーはミホークとペローナの方が上のゾロを見て、思わず笑いが込み上げてしまう。
人から指図を受けるのが嫌いなくせに、ゾロには頭が上がらない人間が何人かいるようだ。
ミホークはもちろんのこと、なんやかんや言って自分の世話をしてくれるペローナに対しても、不満そうにしながら言うことを聞く。
「おはよう」
クレイオが後ろから挨拶すると、ゾロはしゃがんだまま顔だけをこちらに向け、“おう”と返事をした。
「雑草と一緒にホウレン草まで抜かないでね」
「知るか。どれも同じ草だ」
ゾロの傍らを見れば、すでに雑草にホウレン草が混じっている。
ああ、これで朝の朝食はホウレン草入りオムレツに決まったな・・・とボンヤリと思っていた、その時だった。
「ミホークが今日からしばらく留守にするらしい。さっき出て行ったぞ」
ブチブチと雑草を抜きながら、ゾロが大したことのないように言った。
確かにミホークがふらりと航海に出るのは珍しいことではない。
しかし、昨晩の様子を考えると、その理由が気になった。
「・・・? どうした」
クレイオが返事しなかったのを不思議に思ったのか、もう一度こちらを見上げてくる。
「別に・・・昨日は何も言っていなかったから、ちょっと驚いていただけ」
「へェ、そうかよ。随分と薄情な親父だな」
「ゾロには関係ないでしょ」
「まァ、おれには関係ねェな」
そんなに遠慮なく見つめられると、居心地が悪い。
このまま雑草と一緒に抜いてしまったホウレン草だけ拾って城に戻ろう。
そう思ってゾロの横で腰を屈めた、その瞬間。
グイッと服の胸元を引っ張られたかと思うと、危ないと言う前に唇で口を塞がれた。
「・・・!」
それはほんの一瞬で、互いの唇が離れるとゾロは悪戯っ子のような笑みを浮かべる。