第1章 始まりと終わりの町(シャンクス)
「貴方はずいぶんと“変わった”ようね、シャンクス」
「そうか?」
「“麦わら帽子”はどうしたの?」
あるべきはずの場所に無い、左腕。
もちろんそれも気になるが、もっと大事なことがある。
常に頭に被っていたはずの、なければいけないものが無い。
クレイオの視線の動きで、言いたいことを悟ったのか、シャンクスはポンポンと自分の頭をたたいた。
「はは・・・気づかないわけねェか」
小さくため息を吐きながら、処刑台を見下ろす窓辺にハイビスカスを置くクレイオへと歩み寄る。
そして、自分より一回り小さいその身体を背中から抱きしめた。
「まあ、積もる話は山ほどあるが・・・」
「・・・・・・・・・」
「まずは、風呂をくれねェか。左腕を失ってから、もう何週間もゆっくりと浸かっていない」
鼻をくすぐるのは、ハイビスカスの芳香。
眼下に見下ろすのは、偉大な海賊が死んだ場所。
クレイオはゆっくりと振り返ると、懐かしそうにシャンクスを見つめた。
「そうくると思って、もう沸かしてある」
そう言って、薄く口紅をひいた唇で微笑んだ。