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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




手の平の上の真珠は直径1センチほどの小さな玉なのに、とてつもなく重く感じた。
それは世界中の欲望が向けられているからか、それとも彼女の想いの強さからなのか。

ロシナンテはふと微笑み、真珠にキスをした。

「これは受け取れねェ」

そう言って、真珠をクレイオの右手の中に返す。

「この真珠はお前が自分のために使ってくれ」

「そんな・・・」

自分を天竜人から救ってくれたロシナンテとは違い、クレイオには彼を守ってあげるほどの力はない。
できる事といえば、真珠を渡すことくらいだったのに・・・

するとロシナンテはクレイオの髪に口づけながら、背中を優しくさすった。


「お前はまだ、本当の意味で“自由”になったわけじゃない」


この背中に押された天竜人の烙印。
これがある限り、クレイオは奴隷のままだ。
それに“真珠の人魚”である以上、必ずまた彼女を捕えようとする者が出てくる。


「何年になるか分からないが、おれがお前と一緒にいられない間・・・もし何かあったら、それを使ってくれ」


真珠を求められてまた捕まりそうになったら、それを渡せばいい。
金が必要になれば、売ればいい。

おれが戻るまで、どうか囚われの身にはならないでくれ。


「“人魚の涙”はクレイオ、お前自身のために使って欲しい」


遥か昔、この世で最初の“真珠の人魚”が生まれてから・・・

長い歴史の中で、そんな事を言った人間はいたのだろうか。


人とは欲深い生き物だ。
欲望のためならば争いも厭わない。


それなのに目の前にいる人は争いを好まず、
欲の欠片すら見せず、

悲しい運命を背負った人魚を、ただただ純粋な愛で包んでいる。


「そんでよ、おれと再会した時にもう一度泣いてくれ」


二粒の真珠で二つの指輪を作ろう。
二人が二度と離れない証として───


するとクレイオは、ロシナンテの額に自分のそれをくっつけながら笑った。


「うん・・・貴方にまた会えた時はいくらでも泣こう・・・」


それまではこの一粒の真珠とともに強く生きていく。






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