第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
「でも貴方は・・・こう言ってくれた」
“君は涙を流さないのか・・・? それとも・・・涙を流せないのか・・・?”
“君が笑ってくれるなら、おれはピエロにでも何でもなるよ”
「最初は変な人だと思ったけれど、貴方は最初からとても温かかった」
「おいおい、変な人は余計だぞ」
ちょっと拗ねた顔を見せるロシナンテを見て、可笑しそうに口元を綻ばせるクレイオ。
その表情がとても愛らしくて、頬を撫でずにはいられなくなる。
「ありがとう、ロシナンテ」
「・・・・・・・・・」
「私に心をくれてありがとう」
目の前に広がるグランドラインの海。
太陽の光が水面に反射し、まるで宝石をばらまいたようにキラキラと輝いている。
「貴方の声はずっと、私の心に響いている・・・だから・・・わかる」
「・・・・・・・・・」
大きな手に絡む、細くて白い手。
どこか不安げに震えている。
「貴方が遠くに行ってしまおうとしていること・・・」
貴方はこの海のどこかにいるドフラミンゴを止めに行くのでしょう?
思い出の地であり、故郷であるドレスローザを守るために・・・
「お願い・・・私も連れて行って。貴方と一緒にいたい」
「何をバカなこと言ってるんだ!」
「貴方には迷惑をかけないようにする! 自分の身は自分で守るから、どうか───」
貴方のそばにいさせて欲しい。
だがその願いは当然、聞き入れられるものではなかった。
「・・・ダメだ!!」
「どうして・・・?」
「言っただろ、ドフラミンゴは恐ろしい男だ。もしお前が“真珠の人魚”だと知ったら、想像もつかない苦しみをお前に与えるだろう」
「でも私は今までも拷問には耐えてきた」
「違う!! あいつは天竜人とはワケが違う・・・悪魔そのものなんだ」
破壊を好む彼にとって、自分の意に従わぬ者は単なるゴミと同じ。
たとえ巨万の富を生み出す人魚であっても、一度興味を失えばその場で首を刎ねるだろう。