第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
「さて、私はそろそろ行こう。お前はこれからどうする?」
「おれは・・・ドンキホーテ海賊団を探します」
「そうか・・・」
やはりお前はどこまで行っても“海兵”だ。
クレイオに対してそうだったように、ドレスローザの事も放っておけないのだろう。
「それでは、これを渡しておく。おれとお前だけの専用電伝虫の番号だ。これで随時、状況を知らせろ」
「はい」
「合言葉はそうだな・・・“おかき”と“あられ”にしようか」
「それ、センゴクさんが今食べたいものでしょう」
クスクスと笑っているロシナンテに、センゴクはやれやれと顔を綻ばせた。
ガープに笑われるかもしれないが、自分もかなりの親バカのようだ。
「ムチャはするなよ。お前はドフラミンゴの動向だけ知らせてくれればいい。そのあとのことは海軍が判断する」
「はい、わかりました」
「ああ、それと・・・」
センゴクは立ち上がると、尻についた砂をポンポンと払いながら笑った。
「天竜人の執事な、殺されたようだぞ」
「え・・・?!」
“クレイオは“魚”ですよ。それもただの魚じゃない、“金”を生み出す魚なんです”
真珠を生み出させるために、クレイオに拷問を与えていた執事。
彼女をインペルダウンに連れていけばどうかと天竜人に進言したのも彼だ。
それが失敗した責任を取らされたのだろう。
「じゃあ、ロシナンテ・・・達者でな」
「はい・・・センゴクさんも・・・」
センゴクがいなければ自分の計画は失敗していた。
海軍の最高戦力として、本当だったらロシナンテを止めなければいけない立場だったはず。
だけどセンゴクは“育ての親”として、ロシナンテに正義を貫かせた。
「ありがとうございます、センゴクさん」
去っていく大きな背中に、正義の二文字。
ロシナンテはそれに向かって、いつまでも頭を下げていた。
───これが、ロシナンテとセンゴクが顔を合わせた、最後となった。