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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)





生きている・・・

ロシナンテは生きている。


何故、そう思うのかは分からない。

水の中で人間はまともに声を出すことができない。
だけど彼の声は確かに、クレイオに届いていた。


「ロシナンテ、今行く・・・!」


もうもうとした煙と濁流の中に飛び込む。
何かの破片が皮膚を切り裂いた。
ゴゴゴゴ・・・という恐ろしい音を立てて沈んでいく沈没船の残骸が、まるで竜巻のように渦巻いている。
その中に入っていくのは、たとえ人魚であろうとも自殺行為だった。

でも、恐れは無い。
なぜなら、どこに行けばいいのか分かっていたから。

そこに必ずロシナンテがいる。

確証などない。
だが、確信があった。

ロシナンテがいる場所。
そして、彼はまだ生きているという事に。


“クレイオ・・・”


お願い、名前を呼び続けて。
私が必ず“そこ”に行くから。



「ロシナンテ!!」



この世界の生物において、最速の遊泳速度を誇る人魚。
しなやかな尾ひれで濁流を蹴り、炎と鉄破片をかいくぐりながら、“一点”を目指す。


船が海に飲み込まれてから、1分足らず。

クレイオの瞳に暗闇の中で光る命の灯が飛び込んできた。
それは大破した鉄の扉の間に挟まっている。


「ロシナンテ・・・!」



人間の男に恋をした人魚。
傷だらけになりながら両手を伸ばし、暗い海底へ沈もうとしていた愛する人の身体を抱きかかえる。



「死なないで・・・」



身体を抱き寄せ、呼吸をしていない口に唇を寄せた。
するとまるで死人のように蒼白となっていたロシナンテの顔がピクリと動く。



「───あと3秒だけ耐えて」



空気のある海上までは十数メートル。
人魚の泳力をもってすれば、たとえ大の男一人を抱えていてもそれだけあれば十分だった。












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