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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




「・・・・・・・・・」
「中佐? 何かお気に召さないことでもあるのでしょうか?」

護送船を見ながら黙り込んでしまったロシナンテに、若い海兵は怪訝そうな顔で首を傾げた。
どうやら船に不満を持っているように思われたらしい。

「あ、いや・・・ところで、今回の任務に当たる海兵の人数は?」
「ロシナンテ中佐指揮のもと、航海士含めて船員は20名ほどになります」
「そうか。救命ボートは全員が乗れるだけあるんだろうな?」
「は? あ、いや・・・はい、確か10人乗りの救命艇が3隻あります」

それなら十分だ。
2隻に船員を全員乗せてから、自分とクレイオは残りの1隻で脱出しよう。

「ありがとう。もうすぐ例の人魚がやって来る、お前達は準備を進めてくれ」
「わかりました!」

パタパタと船の方へ駆けていく彼は、いったいどこの部隊所属だろうか。
階級はまだのようだけど、将来有望な海兵の命を奪ってはいけない。

死ぬのは“ロシナンテ中佐”だけでいいんだ。

気持ちを落ち着かせるため、小さく深呼吸をしたその時だった。


「───ロシナンテ」


全てを懸けるに値する、その声。
命を投げ打ってでも守りたいと思うその存在に、微笑みながら振り返る。

すると、車椅子に乗せられたクレイオが顔を綻ばせていた。

「おはよう、ロシナンテ」
「おはよう、クレイオ」

いつもと変わらない朝の挨拶。
いつもと変わらない朝の太陽。

・・・これが最後になるかもしれない。

けれど、昨晩は震えていた真珠の人魚は、朝陽の下で微笑んでいた。


“信じる・・・貴方のする事は全て信じる”


微かな希望の、あまりに大きな代償。
ロシナンテは海兵として歩む人生を手放そうとしている。

クレイオはそれを止めることも、反対することもできなかった。

───何を言ってもロシナンテの心は変わらない。

それが痛いほど分かったから。








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