第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
「そしてそのまま姿をくらまします。海兵達は皆、おれ達が死んだと思うはず」
「・・・・・・・・・・・・」
「ロシナンテ中佐は“真珠の人魚”護送に失敗し、海難事故により殉死した・・・彼らはそう報告することでしょう」
静かに語るロシナンテの口調からは、一切の迷いが感じられない。
クレイオがインぺルダウン送りになると聞いてから、まだ一時間も経っていないというのに、まるでずっと前から計画してきた事を語っているかのよう。
もしかして、この男は───
「そうなればおれは海兵ではなくなり、世界から“消えた男”になる・・・」
「ロシナンテ・・・お前・・・」
「センゴクさん・・・貴方ならもうお気づきでしょう」
両親に死なれ、兄と離れ離れになって泣いていた子ども。
“身寄りがないのか・・・・・・!!”
その肩はとても頼りなくて。
“───じゃあおれと一緒に来るか?”
握り返してきたその手はとても小さくて。
あれから14年。
立派な海兵に成長した男は今、その肩書きを捨てようとしている。
「おれはその足でドフラミンゴのもとに向かいます」
やはりか・・・とセンゴクは思った。
やはり、ロシナンテはドレスローザを放っておけないのだ。
「海兵でなくなっても、おれの背には正義の二文字があります。だから、ドンキホーテ海賊団に入った後も、センゴクさんに報告を入れます」
海兵のままだったら、ドフラミンゴに関する任務には就かせてもらえない。
それに、クレイオを救う事もできない。
ならば、海兵としてのドンキホーテ・ロシナンテを殺す。
それがロシナンテの選んだ答えだった。