第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
「センゴクさん・・・確認させてください。クレイオがインぺルダウンに行った後・・・おれはどのような任務に就くのでしょうか・・・?」
“ロシナンテ、お願い・・・ドレスローザを守って”
“ドフラミンゴからドレスローザを守って”
「それは分からん・・・だが、ドフラミンゴに関係する仕事に就かせる事はできん。さっき、おつるちゃんにもそう念を押されたよ」
「それは・・・“家族”だからですか?」
「まぁ、そうだな」
センゴクは父親代わりだ。
たくさんの愛情を注いでくれたし、思い出もたくさんある。
だが、自分はドンキホーテ一族の人間で、ドフラミンゴと同じ血が流れている。
“情”が沸いて寝返る可能性がある人間を、任務に就かせるわけがない・・・か。
でも・・・
今、おれには守りたいものがたくさんある。
“見てみたい・・・貴方が涙を流すほど美しいと思った、ヒマワリの花を”
涙が出るほど美しいと思った、故郷を。
そして・・・
“ロシナンテが遠くに行っちゃうと思うだけで、私はいくらでも真珠を生み出すことができる”
涙が出るほど愛しいと思った、人魚を。
「センゴクさん・・・クレイオをインぺルダウンに護送する役目を、おれに任せてもらえないでしょうか」
「ああ、それくらいなら私からも言っておこう」
「ありがとうございます」
その時、ロシナンテには一つの考えが浮かんでいた。
いや、考えというより、それは覚悟だった。
「ロシナンテ・・・? お前・・・」
その表情に気づかぬセンゴクではない。
何せ、8歳の頃から育ててきた我が子同然の海兵なのだから。
その事はロシナンテも重々承知だった。
真っ直ぐとセンゴクを見つめ、柔らかく微笑む。
「おれはセンゴクさんに嘘を吐くことができない。だから今、全てを明かし、その上で許しを請いたいと思います」
「許し? いったい何をする気だ?」
ただならぬ空気に、センゴクの表情が強張る。
対称的に、ロシナンテは静かな表情をしていた。
「───おれはここで死にます」
それは、センゴクが予想だにしなかった、ロシナンテの強い覚悟だった。