第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
その日、ロシナンテは海軍本部に呼び出されていた。
それはクレイオの世話をする任務に就いてから初めてのことだった。
久しぶりに帰ったマリンフォードだが、どこか落ち着かないのはマリージョアの空気に慣れすぎてしまったからか。
“お前に重要な話がある。本部にすぐに来い”
電伝虫でそう言ってきたセンゴクの声は、どこか焦っているようだった。
もしかしたら何か重大な事が起こったのかもしれない。
ロシナンテは制服を着ることすら忘れて海軍本部へ飛び戻った。
とはいえ、大将は忙しい。
到着してすぐに書斎に向かったものの、おつるさんに呼び出されたらしく、センゴクは不在だった。
仕方なく、戻って来るまでの間、机の隅に山積みされたドフラミンゴ関連のファイルを眺めることにした。
最初に海軍の犯罪記録にドフラミンゴの名が記されたのは14年前。
つまり、父親を殺したその年の事だ。
ノースブルーに浮かぶ小さな島を丸ごと爆発させた一味の“ボス”として、弱冠10歳の少年の名前が記録されていた。
それからもドフラミンゴファミリーの名前が記された記録書は尽きる事なく、ファイルは相当なページ数になっている。
「ドレスローザに関係ありそうな事件は・・・ねェか」
最後の記録では、武器売買を専門とする犯罪組織を一夜にして壊滅させたとある。
でもこれは正義からそうしたのではなく、おそらく交渉決裂したからだろう。
ドフラミンゴ海賊団は明らかに他とは一線を画し、確実な形で富を築いている。
「さすが・・・というべきかな・・・」
つる中将が直々にドフラミンゴを追うようになった最近は犯罪の数が減っているようだが、それでも残虐性を極めた悪事に、我が兄ながら背筋が寒くなる。
“ドフラミンゴからドレスローザを守って”
もし本当にドフラミンゴがドレスローザを狙っているとしたら。
それを止めることが、果たしてできるのだろうか。
───弟として・・・