第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
何度こうしてクレイオと空を見上げただろう。
朝の空
昼の空
夕の空
そして、夜の空
どの色の空の下でもクレイオはとても綺麗だった。
しかし、月明かりの中でこそ、彼女はその美しさを増すようだ。
それは“月の涙”と称される真珠を生み出す力を持っているからだろうか。
「・・・ヒマワリ」
花の名を呟き、満天の星空を見つめる。
ロシナンテの膝に座っているクレイオは、聞きなれない単語に首を傾げた。
二人の頭上には、船乗りが方位を求めるために目印とする北極星が輝いている。
「初めてその花を見た時、太陽がそこにあるのかと思った」
「太陽・・・?」
ロシナンテの瞳に蘇るのは、一面に咲き乱れるヒマワリの花。
それは心の奥に大切にしまってきた風景だった。
「新世界に・・・ドレスローザという国がある」
ドンキホーテの人間が戻ってはいけない場所。
愛と情熱に溢れた、平和を愛する国。
ロシナンテは懐かしそうに瞳を揺らしながら、クレイオの頬を優しく撫でた。
「それは800年前に遡る・・・」
20人の王が国を離れ、世界政府の始祖となった。
のちに天竜人と呼ばれるようになったその20人の王の中に、ロシナンテの祖先であり、かつてドレスローザを治めていたドンキホーテ王がいた。
「天竜人という特権を捨てた父は、ある日、おれと兄にこう言った」
ドレスローザは私達にとって祖国だ。
今はリク王家が統治する、平和で美しい国だと聞く。
ドフラミンゴ・・・ロシナンテ・・・
───いつかそこにお前達を連れていく事が私の夢だ・・・