第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
それからのことは、気が動転していて細かくは覚えていない。
日焼けした肌で太陽の下に長くいるのはよくない、などと適当な理由をつけてクレイオを水槽に戻したような気がする。
「ばっか野郎・・・年下相手に、なに興奮してるんだ、おれは・・・!」
露出が高くても、人魚であるせいか、それまでクレイオを性的な目で見る事は無かった。
愛おしいと思った事はあるが、少なくとも欲情した事はなかったはずだ。
けれど・・・
“ロシナンテの心臓、ドキドキしている”
小さな手がペタリと胸を触ってきた瞬間、まるで鈍器で後頭部を殴られたような衝撃で認識した。
彼女が“女”であるという事を。
しかも、大人の女性へと花開こうとしている少女ほど魅惑的で、強烈なまでの瑞々しさと美しさを兼ね備えた存在はないという事を。
「おれは・・・海兵だぞ!」
自室に戻ったロシナンテは、まだ夕方前だというのに部屋のドアに鍵をかけると、火照った身体を冷やすためにシャツを脱いだ。
その肌に滲んだ汗の量が、彼の焦りがどれほどのものだったかを伺わせる。
「クソ、勃ってんじゃねェよ」
前の彼女にフラれてから随分と経つ。
最近は自慰もしていなかったから、相当溜まっているのかもしれない。
「たるみすぎだな・・・これじゃセンゴクさんに怒られても仕方がない・・・」
行った事は無いが、マリージョアなら海兵を相手にした娼館があるから、手っ取り早く処理をしてもらうことができるのに・・・
仕方がない。
まだ日が高いうちからやりたくはなかったが、ロシナンテはズボンと下着を脱ぐと、ベッドの上に腰かけた。
「何か別の事を考えなきゃな・・・えーと・・・」
そういえば、10代の頃に先輩から貰ったアダルト本を仲間と回し読みした事があったな・・・
あれを思い出しながらすればいい。
「・・・確か、すっごく胸が大きい子がいたよーな」
あれだけ仲間内で盛り上がった豊満ボディ、簡単に思い出す事ができるはずと期待したのだが・・・
思い起こそうとしても、なぜか輪郭がボヤけてしまう。