第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
ここがマリージョアだからか。
それとも、人魚が見せる幻なのか。
遮るもの一つない空の下でクレイオと過ごす時間は、まるで外界から切り離されたかのようにそこだけ時の流れが違う。
ロシナンテはいつものように離れの正面にある噴水の淵に座り、クレイオと空を見上げていた。
「初めて海兵の制服を着たのは13歳の時だった」
海のどこかでドフラミンゴが悪事を働いているというのに。
「それを着たまま寝るほど嬉しくて・・・でも、起きたらシワクチャになっちまっててな。あれは怒られた」
ドレスローザに危険が迫っているというのに。
「訓練ではおれは何をやってもヘタクソで・・・教官にいつもドヤされていたなァ」
麗らかな日光を浴びながら、膝の上に人魚を座らせて・・・
しょうもない昔話をする事が、本当に自分のすべき事なのか。
そう思うのに、二人でこうしている事も大切だと感じてしまう。
「・・・ロシナンテ」
場を盛り上げようと他愛もない話を続けていたロシナンテだったが、その笑顔が作り物である事にクレイオは気づいているようだ。
心を推し量ろうとしているかのように、吸い込まれそうな瞳で見上げてくる。
「・・・・・・・・・」
深く追求する事はないものの、そんなクレイオを見るたびに、ロシナンテには思う事があった。
「何か・・・心配な事があるの?」
クレイオはとにかく他人の感情に敏感だということ。
どんなにごまかそうとしても、何か不安がある時はすぐにその事がバレてしまう。
それは、まるで───