第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
翌朝。
「───ッ!!!」
ロシナンテが布団を投げ飛ばすように起き上がると、薄暗い部屋にカーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。
時計の針は9時を指している。
「・・・気持ち悪ィ・・・」
全身が汗でびっしょりだ。
久しぶりに子どもの頃の夢を見たからだろうか。
ここ何年もこんな事は無かったのに・・・
“ドフラミンゴが、王としてドレスローザに帰還する事を企てているようだ”
昨日のセンゴクの言葉が頭から離れない。
ドフラミンゴが海賊になったのは知っている。
トレーボルを始めとした仲間がいることも。
ノースブルーで悪さをやっているぐらいならまだ良かった。
まさかドレスローザを狙っているなんて・・・
“ドフラミンゴ・・・ロシナンテ・・・いつかそこにお前達を連れていく事が私の夢だ”
新世界に浮かぶ、愛と情熱の国ドレスローザ。
花々が咲き乱れる、あの美しい島を壊そうというのか。
「何を考えてるんだ・・・ドフィ・・・!!」
“おれ達”は・・・ドンキホーテの人間だけは、ドレスローザに手を出してはいけない。
「だが、おれにはどうしようもねェ・・・」
ロシナンテは今、別の任務についている。
なにより、ドフラミンゴの件はおつるさんの管轄だ。
下っ端の自分の出る幕ではない。
センゴクがこの事を教えてくれたのは、実の弟には知る権利があると思ったからだろう。
「センゴクさん・・・そういえば、センゴクさんは・・・?」
昨日、ドフラミンゴについての話を聞いた後、“一人にして欲しい”と頼んだきりだ。
「やべ! センゴクさん、もう本部に戻ってしまったかな?!」
慌ててベッドを降りたせいで、床にずり落ちていたシーツを踏んづけて盛大にひっくり返る。
それでもなんとかズボンとシャツを着ると、部屋を飛び出した。