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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)





ここから先の話はクレイオはおろか、誰にも聞かせることができないのだろう。
センゴクはロシナンテの部屋に移動することを望んだ。

そして2人きりになった途端、険しい顔を息子同然の男に向ける。

「センゴクさん・・・?」

ロシナンテはその表情に、言葉に出来ない不安を覚えた。
電伝虫ではなく、わざわざここまで出向いて、いったい何を伝えに来たのだろう。

しばしの沈黙が流れた後、センゴクが重い口を開いた。


「ドンキホーテ・ドフラミンゴ」


その名に、ロシナンテの心臓がドクンと大きな音を立てる。
同時に、何度も忘れようと努力した記憶がまざまざと蘇った。


“なぜおれの力まで奪った!!!”

幼いながらも、憎しみに溢れた声。


「その名前が分かるな、ロシナンテ?」


“兄上やめて!! 兄上!!”

何もできず、ただ泣き叫ぶしかできなかった自分。


「当然です・・・彼の名だけは、目を背けようがない・・・」


ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
14年前、実の父親を殺して悪魔となった少年。


「兄・・・上・・・」


ロシナンテにとっては、2つ年上の兄だった。


「兄う・・・いや、ドフラミンゴがいったいどうしたんですか?」


心臓が痛いほど鼓動している。

怖い。
その先のセンゴクの言葉を聞きたくはない。

彼が生きている事は、風の便りで知ってはいた。

センゴクに拾われ、海兵として育てられた自分とは違い・・・
ノースブルーのマフィアに拾われ、裏社会で育てられた兄。

生きてさえいればいいと最初は思っていたが・・・

その悪名はもう、目をつぶることができないまでになっている。


「これは確証がなく、海軍本部でも一握りの人間しか知らない極秘情報なのだが・・・」


ドフラミンゴとロシナンテの間柄を知っているセンゴクは、この事をロシナンテに伝えるべきか迷っていた。
だが、彼の優しさと正義感を思えば、隠すわけにもいかない。

───事が事だけに。

センゴクは大きく深呼吸し、腹を括った。


「ドフラミンゴが、王としてドレスローザに帰還する事を企てているようだ」


その瞬間。

ロシナンテとクレイオの運命の輪は悲しい結末へ向かい、ゆっくりと廻り始めていた。









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