第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
同情ではなく、愛情ならば・・・
この感情は許されないものだ。
おれは海兵で人間、クレイオは人魚。
結ばれるわけがないし、結ばれていいはずもない。
“妙ですね、クレイオの話をしているのに・・・なぜ、貴方まで悲しそうな顔をしているんです?”
頭では必死にその感情を掻き消そうとしているのに、心はどうしてその逆を行こうとするんだ。
「あ!! 今、星がスーって落ちて消えた!」
「それは流れ星だ。願い事をすると叶うんだぞ」
流れ星どころではないロシナンテが気の無い返事をすると、クレイオは瞬きをしながら星が流れた場所をもう一度見上げ、何かを呟いた。
「ロシナンテの心配事が無くなりますように」
心の中を見透かしたかのような言葉に、ロシナンテの瞳が大きく広がる。
「今・・・なんて?」
「流れ星を見たから、願い事したの」
さっき教えた迷信を本気にしたというのか?
いや・・・それよりも・・・
「願い事・・・そんなんでいいのか? もっとあるだろ、ホラ、ここから逃げ出したいとか」
「そっか・・・じゃあ、また流れ星を見たら今度はそれをお願いする」
クレイオはニコリと笑うと、もう一度さっきと同じ願い事を呟いた。
「今はロシナンテの方が大事。今日、一度も笑ってない」
「な・・・なに言ってるんだ! ホーラ、いつも笑顔のロシナンテさんだぞ!」
満面の笑みを見せるも、クレイオは首を横に振るだけだった。
「それは作った笑顔。いつものロシナンテはそんな変な顔で笑わない」
「へ、変?!」
自分の作り笑いはそんなに変なのか、と戸惑っていると、クレイオの柔らかい手がロシナンテの頬を撫でた。