第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)
世界を見渡せば、異種族同士で結ばれた者など星の数ほどいる。
巨人と魚人が結ばれれば、ウォータンと呼ばれる魚巨人の子どもが生まれる。
魚人と人間が結ばれれば、半魚人の子どもが生まれる。
中には、手長族と足長族の人間同士が結ばれて、手足の両方が長い子どもが生まれることもある。
だからきっと、不思議でも不可能でもないはず。
人間と人魚が結ばれることも───
ロシナンテはあの日から毎日クレイオを外へと連れ出した。
空は朝、昼、晩とその表情を変える。
ゆっくりとロウソクに火を灯していくような朝日。
世界の全てを照らすような真昼の日光。
赤々と燃えるような夕焼け。
しかし、クレイオがもっとも目を輝かせたのは、
降るような星の中に浮かぶ、銀色の月明かりだった。
「きれい・・・海底にはない光」
おそらく、魚人島を照らす“陽樹イブ”が運ぶのは太陽光なのだろう。
月のように静かで、漆黒に漂う白い泡のような光は、クレイオにとって珍しいもの。
「まるで真珠のようだな」
ロシナンテも満月を見上げながら言うと、その膝に座っているクレイオは艶やかな赤い唇に笑みを浮かべた。
「グランドラインのどこかの島では・・・真珠は“月の雫”と言い伝えられているそうだ」
これは昔、ロシナンテがどこかの酒場で聞いた話。
夜になると貝は海面へ浮かび上がり、月の雫を受け取って真珠を作り出すと信じられている。
「ふふ・・・でも、本当は月光すら届かない、海の底で生まれているのにね」
クレイオが可笑しそうに笑った。
月の雫
人魚の涙
人間は様々な呼び方で真珠を崇める。
それはダイヤモンドやルビーなどの天然鉱物とは違い、命あるものが生み出す神秘の石だからなのかもしれない。