• テキストサイズ

【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




それはクレイオにとって初めて目にする光景だった。

───男の、しかも大の大人が涙を流している。


「クレイオ・・・つらかったなァ・・・」


どうしてこの人は泣いているのだろう。
この人が苦しみを味わったわけではないのに。
この人が“真珠の人魚”の宿命を背負っているわけではないのに。


「どうしてロシナンテが泣くの?」


クレイオは明らかに戸惑った顔を見せていた。
どうしていいか分からず、右手を伸ばしてロシナンテの頬に触れると、その涙はとても温かかった。

「だってよ・・・ひでェ話じゃねェか・・・!」

グシシと鼻を鳴らし、ブサイクな顔で泣きはらしながらクレイオを見つめるロシナンテ。

「君は何一つ悪いことをしていないのに、こうしてマリージョアに連れてこられ、拷問を受け続けてきた」

「・・・・・・・・・・・・」

「人間は己の欲で君を傷つけているというのに、君は争い事や悲劇が繰り返されないように涙を堪えている」


それがどうしたというのだろう、とクレイオは首を傾げた。

誰だって戦争は見たくない。
同じ種族同士が殺し合う姿を見て、面白いと思う者はいないだろう。
その原因が自分にあるならば、なおさらだ。

だけど人間の世界ではそうじゃないのだろうか?


「おれは・・・初めて会った時の君の顔が忘れられない」


鉄の仮面を被っているかのように無表情で、人間を恨んでいるから心を閉ざしているのかと思った。
だが実際は、人間を含めたこの世界を守るために心を失くしていた。

なんて無垢で、穢れを知らない人魚なのだろうか。









/ 1059ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp