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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




「私は当時10歳・・・大人の嘘を見抜くことなどできなかった」

リュウグウ王国の兵士が守る家を出て、魚人に連れられた先は魚人島のはみ出し者が集まる魚人街だった。

「そこにお母さんはいなかった。代わりに、天竜人の使者だという人間がいた」

初めて見る人間は、とても冷たい顔をしていた。
悍ましいモノを見る目つきでクレイオを見ると、大量の金を魚人に渡した。


“ある高貴な御方がお前の力に興味がある”


「私は抵抗をしたけれど、どうしようもできなかった。そのまま船に乗せられて地上まで連れてこられたの」


彼らの目的はたった一つ。
自分に涙を流させること。


「でも、私の涙は争いと悲劇しか生み出さない。私が泣けば、“真珠の人魚”の悲しい歴史が繰り返されてしまう」

「クレイオ・・・」

「だから私は絶対に泣かないと決めた。お母さんに二度と悲しい想いをさせないために」

海の奥底で、静かに長い時を生きるアコヤガイ。
物言わぬ貝はただ、神の悪戯によって産声を上げた人魚の幸せを願っている。


「私がここに捕まっているのも、貴方が私に涙を流させるよう命令されているのも、真珠の涙が原因なのよ」


ロシナンテは言葉を失った。
この少女がいったい、どれだけの苦痛を受けてきたか想像もつかない。

彼女にとっては謂れのない暴力だっただろう。
涙が真珠に代わるということ以外は、本当に普通の人魚だ。


「ロシナンテ?」


争いや悲劇の元にならないよう・・・
自らの命を絶っていった過去の人魚達と同じ運命を辿らないよう・・・
母を悲しませないよう・・・

幼い君は、心を失わざるを得なかったのか・・・


「泣いているの・・・?」


クレイオが不思議そうに見上げたロシナンテの両目からは、大粒の涙があとからあとから零れていた。











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