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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




ロシナンテは慌てて鯛の塩焼きを背中の後ろに隠すと、水槽のガラスをコンコンと叩いた。


“ごめん。もう二度としない”


振り返った人魚に、そう書いた紙を見せる。

せっかくの楽しい食事を自ら台無しにしてしまった。
これじゃあ嫌われても仕方がないだろう。

クレイオはもう食欲が失せてしまったのか、ロシナンテが作ったハマグリを脇にどけてしまっている。


「本当にごめんよ・・・」


シュンとなりながら、梅干しだけで細々と白米を食べていると、コンコンとガラスを叩く音がした。

「ん?」

顔を上げると、人魚は無表情のまま口を動かしている。

「何? なんて言っているんだい?」

ロシナンテが首を傾げると、クレイオは彼の後ろの方を指さしながらゆっくりと口を開けた。


“き、に、し、な、い、で”


「え・・・? 気にしないでって・・・どういうことだい?」


するとクレイオはロシナンテが作った焼きハマグリを持って珊瑚の上に座る。


“す、き、な、ん、で、し、ょ”


好きなら、食べればいい。
貴方は人間、魚を食べることぐらい知っている。


「クレイオ・・・」


私はハマグリが好き。
貴方は魚が好き。

一緒に食べれば、もっと美味しい。


クレイオにとって人間とは恐怖の対象でしかない。
しかし、目の前にいる彼は違うような気がする。

焼き魚を見せてしまったぐらいでこんなに落ち込むなんて・・・

人魚や魚人を目の前で八つ裂きにした他の人間達とは大違い。


「ありがとう。でも焼き魚はやめておくよ、君を傷つけたくないからね」

「・・・?」

「決めたんだ。おれはどこに居ても、自分の“正義”に従うって」


───まずは君に感情を・・・笑顔を、取り戻させる。


それからのことは、それから考えればいい。
“涙”を流させるのだって、苦痛以外の手段がきっとあるはず。

そう例えば・・・


「ほら、笑い過ぎて涙が出ることもあるだろ」


そのためには、何でもするさ。


「君が笑ってくれるなら、おれはピエロにでも何でもなるよ」



それこそが、ロシナンテの“正義”だった。








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