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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)





天竜人に挨拶をすると言ってセンゴクが執事と出て行くと、残されたロシナンテは人魚を見上げた。

突然現れた海兵に警戒心を抱いているのか、人魚は離れた所から二つの大きな瞳をこちらに向けている。

まだ若い。
ぽってりとした瑞々しい唇や、細い身体が幼さを強調している。
しかし、意志の強そうな眼差し、水の中で七色に光る鱗は、見ているとそのまま吸い込まれてしまいそうになるほど美しく、魅力的だった。


「や、やあ、こんにちわ」


とりあえず声をかけてはみたものの、人魚に反応はない。
ただ感情の無い瞳でじっとロシナンテを見ているだけだ。


「君はクレイオっていうんだろ。おれはロシナンテ、ドンキホーテ・ロシナンテ」


名乗ってみても、人魚は微動だにしなかった。
首を傾げたまま口を開こうともしない。


「もしかして・・・聞こえないのか?」

これだけ大きな水槽だ、厚いガラスと水が外の音をシャットアウトしてしまっているのかもしれない。
ロシナンテはポケットから紙切れとペンを取り出し、ガシガシとヘタクソな文字を書き始めた。

「よし! 読めるかな?!」

縦10センチ、横20センチほどのしわくちゃな紙を水槽に押し付ける。


“おれはロシナンテ”


人魚はそれをジッと見てから、ロシナンテの方に視線を移した。


「おれの名前な!」


ロシナンテは満面の笑みで自分の顔を指さすと、もう一枚紙を取り出し別の言葉を走り書きする。


“ともだちになろう”


そして、最初に書いた紙を右手に、次に書いた紙を左手にそれぞれ持って、一音ずつ声に出して読み上げた。


「お・れ・は・ロ・シ・ナ・ン・テ! と・も・だ・ち・に・な・ろ・う!!」


するとそれまで水槽の後ろの方まで下がっていた人魚が、スーッと前の方に泳いでくる。
崩れんばかりの笑顔でメッセージを掲げている海兵に何を思ったのだろう。

無表情のまま、ゆっくりと口を開いた。


───ロ、シ、ナ、ン、テ・・・


声は聞こえないが、口の形ではっきりとそう言っていることが分かった。
そんな人魚に、ロシナンテは嬉しそうに何度も頷く。


「そうそう! ロシナンテ!! よろしくな!!」




ロシナンテとクレイオ。

運命の糸で結ばれなくとも、その愛は永遠となった二人は、こうして出会った。








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