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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)




クレイオの背中にある天竜人の紋章。
それを見る男の瞳は憐みというより、憤りに近い感情が込められていた。


「お前は先ほど、その烙印がある限り自由にはなれない、と言ったな」


一度刻まれた烙印は消すことができない。
何よりクレイオに割り当てられた運命が、彼女を決して“自由”にはさせなかった。

同じ人魚でも、魚人島の入り江で戯れている人魚達だったら、天竜人もそれほど躍起になってクレイオを探してはいないだろう。

しかし彼は今、軍艦数隻を派遣させてまでクレイオを探している。

何億・・・いや、何十億払っても“安い”と思えるほどの価値を秘める人魚を再び手に入れるために。


「私はあの人に心をもらった・・・だから、この心に背きたくはないの」


その言い方が珍しかったのか、少女が大きな目をパチクリとさせながらクレイオを見た。
男は溜息を吐きながら窓の外を見つめている。

「自分のあるべき場所に帰ることは“心”に反する、か・・・奇遇なものだ」

彼の瞳には今、静かなる月が映っていた。
しかし、心はその凛とした月とは別のところにある。

「お父さん・・・?」

いつもとは違う父の様子に、娘が不安げな顔で見上げた。
幼いが、本当に感受性豊かな子のようだ。

「信じられん・・・見ず知らずの人魚の心が、これほどまでに“共鳴”するとは」

海で人魚を助けたのはただの偶然。
だが今、彼女を救ってやりたいと思うのは、自分がそのような星のもとに生まれたからか。

故郷と一緒に“捨てた”、自分の中に眠る技術。

それを使えば、この人魚をほんの少しだけ救えるかもしれない。

「確かに烙印を消し去ることはできない。だが私ならば、無くすことができる」
「無くす・・・?」

天竜人の紋章はあまりにも目立ちすぎる。
それを見たら否が応にも、自分が奴隷だったことを再認識させられるだろう。

でもたった一つだけ・・・烙印を誰の目にも触れなくさせる方法がある。










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