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【ONE PIECE】ひとつなぎの物語

第8章 真珠の耳飾りの少女(コラソン)







200年前まで魚人族と人魚族は“魚類”に分類され、人類から迫害の対象とされていた。
同じく生を受けた者同士、本来は種族としての優劣など無いはず。
しかし、世界政府が“魚人島”の存在を認知し、交友を宣言した今でもその悪しき伝統は根強く残っていた。


「ん・・・」

人魚が目を覚ますと、真っ先に視界に飛び込んできたのは木でできた天井。
ところどころに隙間があり、真ん中からは小さなランプがぶら下がっている。
ここが海の中でないことは明らかだった。

「・・・!!」

人魚は慌てて起き上がろうとしたが、薄い毛布が身体に巻き付き、上手く身動きがとれない。


───私は捕まってしまったのか・・・!!


人魚が必死に鱗をバタつかせようとした、その時だった。


「動いたらダメだよ。傷口が開いちゃうってお父さんが言ってた」

「・・・?」

突然聞こえてきた幼い少女の声に、人魚は怯えながらそちらの方を振り返る。
すると、おそらくこのベッドの持ち主だろう小さな女の子が、パタパタと部屋から出て行った。
そして間髪入れずに、今度は人間の男が入ってくる。


「気が付いたか?」


40歳くらいだろうか。
散切り頭に、凛々しい顔つきのその男は、人魚が今までに見てきたどの人間とも違う空気を漂わせていた。
先ほどの少女は男の後ろに隠れながらこちらを見ている。

「言葉が通じないか・・・?」

彼は人魚と会話するのが初めてなのか、困ったような顔をしながら娘と顔を見合わせた。

人間が人魚のことをよく知らないのは無理もない。
ひとたびその姿を現せば、高値で売れるマーメイドは人攫いの格好の標的。

事実、つい最近まで“奴隷”となっていた彼女にとって、人間は恐怖の対象でしかなかった。

たった一人を除いて───







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