第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「王だろうと、神だろうと・・・一度“地”に堕ちれば、人間共がかつての支配者に向ける目は憎しみだけだ。リク王や“おれ達”に対してそうだったようにな」
「ドフラミンゴ・・・」
王宮の前に集まった国民達は、ドフラミンゴの身を案じているのではなく、己の将来を案じているだけ。
幼少期の壮絶な経験によって“夜叉”となり果てた彼には、全ての国民がそうとは限らないことに気づくことができないでいた。
「クレイオ。おれは今、ドレスローザの国王でもねェし、七武海でもねェ」
「・・・・・・・・・・・・」
「もし王宮から逃げたいのなら、“今”しかチャンスはねェぞ?」
一糸まとわぬ姿のクレイオを後ろから抱きしめながら、そう囁いたドフラミンゴは余裕に溢れている。
まるで解き方の分かっているパズルを目の前にしているかのようだ。
「今日は天気がいい・・・窓を開けてやろうか? ここから飛び降りれば、下にいる連中に助けてもらえるかもしれないな」
ドフラミンゴの寝室は四階。
クレイオは裸で、空を飛ぶ術だってあるわけがない。
そして何より、ドフラミンゴの長い二本の腕がしっかりとクレイオの身体の自由を封じていた。
「貴方が今、ドレスローザの国王でも、七武海でもなかったとしても・・・」
クレイオはドフラミンゴと向かい合わせになるように身体の向きを変えると、ローブの腰紐の結び目に頬を寄せた。
「私が“生きられる”場所は決まっている」
私はすでに天竜人から見捨てられている。
行く当てなどあるわけがないし、そもそも貴方のカゴの中以外でどう生きていけばいいのかも分からない。
すると、ドフラミンゴはクレイオの顔の輪郭をゆっくりとなぞり、長身を屈めてキスをした。