第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「ドフラミンゴ・・・?」
朝、目を覚ますと隣で寝ていたはずのドフラミンゴの姿がないことに気が付き、クレイオはベッドから起き上がった。
辺りを見渡すと、ローブを羽織っただけのドフラミンゴが窓辺に佇んでいる。
シーツの彼が寝ていた部分からはすっかりと温もりが消えているあたり、随分と長いことそうやって窓から外を見つめているのだろう。
「いったい・・・何を見ているの?」
「・・・お前も見てみろ、クレイオ」
何かを見下ろしながら楽しそうに口元を歪ませるドフラミンゴ。
ローの裏切りが確定した昨晩の剣幕を思えばゾクリとしたが、彼の命令には逆らうことができない。
ドフラミンゴはローに対する“怒り”と、幼い頃からの相棒や忠実な部下を失った“喪失感”をぶつけるように、一晩中クレイオを思いのままにしていた。
「朝刊を見た国民共が喚いてやがる・・・フフフフ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ドフラミンゴの隣に立って下を見下ろすと、王宮の門の前には大きな人だかりができていた。
「国王様!! 何故、王位を放棄されてしまったのですか?!」
「ドレスローザはこれからどうなってしまうのでしょうか!!」
ドフラミンゴが王位を捨て、リク王が失脚した今、この国を率いる者も、治める者もいない。
王宮の前に集まった国民達は戸惑い、嘆き、ドフラミンゴ七武海脱退のニュースの真偽を確かめていた。
「トラファルガー・ローとの取引のためとはいえ・・・本当に大丈夫なの?」
「そりゃどういう意味だ?」
「貴方が何を見越しているのか分からないけれど・・・あれだけの人を不安にさせておきながら、全てがうまくいくとは思えない」
「フッフッフッ・・・だからどうした?」
ドフラミンゴは国民達を見下ろしながら残忍な笑みを浮かべる。
「800年間この国を治めていた“偉大”なリク王家の、たった一晩の裏切り行為でコロッと忠誠を示す相手を変えるような奴らだ・・・“半日”ぐらい国王不在でもどうってことはねェだろう」
ドフラミンゴには策がある。
クレイオにはそれを知らされていないが、妙な胸騒ぎがしていた。