第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「別に」
クレイオがそう答えたところで、ドフラミンゴが納得するわけがない。
だが、ヴァイオレットの記憶を覗いていたことを話せば、それが自分に関することだとすぐに悟られてしまう。
「女同士の秘め事に、男が立ち入っていいものではないわ」
ならば、あからさまに“隠し事”をしていると言った方がいいだろう。
「・・・・・・・・・・・・」
ドフラミンゴは口を真一文字に閉じながらクレイオをジッと見下ろしていた。
ここで目を逸らせば、彼の気迫に負けてしまう。
ヴァイオレットの記憶のことが知られたら、彼女は復讐を果たせなくなる。
もちろん、ドフラミンゴが失脚したら自分に生きる道はない。
それでも・・・
彼女の悲痛な覚悟を覗いてしまったクレイオには、ヴァイオレットを守ることしか考えられなかった。
どのくらい視線を交わらせていただろう。
ふいにドフラミンゴが口元に笑みを浮かべた。
「───“なるほど”、な」
ヴァイオレットの記憶の中で何回か聞いたその言葉に、心臓が凍り付く。
ドフラミンゴは今・・・いったい何に納得したのだろうか。
女同士の秘め事に男が立ち入ってはいけないという、ただの言葉だろうか。
ヴァイオレットがクレイオに能力を発動していたことだろうか。
ヴァイオレットが裏切っていることだろうか。
それとも・・・
「やはり見ているだけというのはつまらねェ・・・おれも混ぜろ」
クレイオの髪を掴む手はいつにも増して乱暴だった。
慣れているはずのその痛みがここまで恐ろしいのは、今、ドフラミンゴに初めて後ろめたさを感じているからだろうか。
そして、ドフラミンゴもそのことに気づいているからだろうか。
「どうした、クレイオ、ヴァイオレット・・・二人とも顔色が悪いぞ」
しかし、クレイオもヴァイオレットも、ベッドの上ではドフラミンゴに従うしかなかった。