第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
自身の記憶を相手に見せることができる、「ギロギロの実」の能力。
それを使ってヴァイオレットが伝えたかったもの。
「・・・・・・・・・・・・」
リク王朝が滅んでから、ヴィオラ王女は復讐心だけをその胸に宿していた。
憎いドフラミンゴの愛人となって身体を許すことが、彼女にとってどれほどの屈辱だったか想像もつかない。
何年も、何年も、ドフラミンゴの心の中を探るチャンスを待ちながら、ヴィオラ王女は人知れず耐えてきたのだろう。
「ヴァイオレット、どうか謝らないで」
貴方が私を殺そうとしたのは当然のこと。
オモチャの一つを壊したところで、ドフラミンゴに与える衝撃は些細なものかもしれない・・・
けれど、全てを見通す力を持つヴァイオレットが、そう判断したということがとても嬉しい。
ヴァイオレットの殺意、それはすなわち、私の存在価値だから・・・
「クレイオ・・・」
美しい顔に悲痛な色を浮かべながら、ヴァイオレットがクレイオの頬を撫でた時だった。
「───お前ら、いったい何をしてる?」
マットレスがギシリと深く沈み込んだ。
それまで正面の椅子に座り、愛人二人が絡み合う姿を鑑賞していた国王が、二人の上に覆いかぶさるようにベッドの上に乗ってくる。
「涙を流すほどヴァイオレットの愛撫が気持ち良かったのか、クレイオ?」
遠慮のない手がヴァイオレットの手を払いのけ、クレイオの顔を強引に上へ向けさせた。
「・・・・・・・・・・・・」
「今、二人で何かコソコソと話していたな。おれに聞かれたくないことなのか?」
ヴァイオレットの記憶を見ることができるのは、彼女の手が目に触れた人間だけ。
ドフラミンゴには何も見えていないし、ヴァイオレットがクレイオに記憶を見せていたことも気づいていないだろう。