第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「まるで、クレイオを失いたくないような口ぶり。抱く時は壊してしまいそうなほど激しく抱くのに」
「見ているのか? 無粋な女だ」
「“愛人”のことは何でも知りたいと思うものでしょ」
そう。
私は片時も貴方から目を離さないわ、ドフィ。
貴方の弱点を知るまでは。
「・・・なるほど、な」
ドフラミンゴはまたしても、何に対して“納得”したのかを明かさず、ヴァイオレットの身体を抱き寄せ、その首筋にキスをした。
「クレイオはおれがいないと生きていけない。そういう風に“教育”している」
「・・・・・・・・・・・・」
「あいつに自由などいらねェんだよ。余計な口出しはするな、ヴァイオレット」
無意識に放たれたドフラミンゴの覇気に、ヴァイオレットの額に脂汗が滲む。
同時に、口紅を引いた美しい唇が笑みの形を作った。
───ようやく見つけたわ、貴方の“弱点”。
「気を悪くさせてごめんなさい、ドフィ」
「・・・・・・・・・」
貴方がいなければクレイオは生きていけない、確かにそうかもしれない。
でも、あの子を檻の中に閉じ込めてまでそうさせているのは何故?
「楽しみましょ、せっかくのリゾートなんだから」
ドフィ。
“貴方”こそが、あの美しい愛妾がいないと生きていけないからでしょう?
クレイオ・・・あの子さえ消してしまえば・・・・・・
そこでヴァイオレットの記憶は飛び、クレイオも覚えのある景色へと移る。
「今夜、ドフィの帰還10周年を記念した、大きなお祭りが開かれるそうよ」
そこは、ドレスローザの首都を見下ろすことのできる「王の台地」だった。
祝祭で賑わう街並みを見つめているクレイオの背後から近づき、殺気を押し殺しながら声をかける。
珍しく辺りには自分以外の幹部はいない。
いつもならドフラミンゴの命によって誰かしらがクレイオを見張っているというのに・・・
これほどの好機はない。
やるなら今しかないだろう。