第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「───ところで・・・新世界を目指すといったら今、“最悪の世代”がそこに集まっているそうだな」
『・・・・・・・・・・・・』
その質問に、相手はほんの一瞬だけ押し黙った。
クレイオが見上げると、ドフラミンゴは冷たい笑みを浮かべたまま、ジッと電伝虫を見つめている。
『“最悪の世代”・・・仰る通り、ほとんどがシャボンディ諸島に集まっているようです』
「シャボンディ諸島に集まったルーキーの中に、ローはいたか?」
『・・・・・・トラファルガー・ローですか?』
“死の外科医”の異名を持つ、ハートの海賊団船長。
すると、電伝虫は静かに微笑んだ。
『彼なら、目撃情報はまだありません』
そう答えた彼女に何かを思ったのか、クレイオがピクリと反応する。
しかしドフラミンゴはそのことに気づいていないようだ。
「海軍に召集されたついでに、ローがシャボンディ諸島にいるなら寄っていこうと思ったが・・・いねェならいい」
『若様・・・何故そこまでトラファルガー・ローに───』
「おれの右腕にするために育てた、可愛い部下だ・・・久しぶりに顔を見たいと思ってな」
ドフラミンゴは高笑いをした。
その笑い声は、聞く人が聞けば恐怖のあまり凍り付くだろう。
その可愛い部下の顔を見たら、彼を脅し、不老手術を施させる。
拒否されたなら、一刻も早く“オペオペの実”を復活させるべく殺すのみだ。
クレイオは恐怖を感じると同時に、電伝虫の向こうにいる女性に違和感を覚えていた。
それは、トラファルガー・ローを指して“彼”と言った彼女の声が、愛情に満ちているように思えたから。
もしかしたら、すでにローはシャボンディ諸島にいて、彼女は彼をかばっているのではないか・・・?
しかしそれは女の直感にすぎず、何か根拠があってのものではない。
「また連絡する」
『はい・・・おやすみなさい───若様』
電伝虫を切ったあと、ドフラミンゴは膝の上に座らせているクレイオの濡れた髪を解き、石鹸の香りを吸い込んだ。
「今の電伝虫の相手は・・・誰?」
「前に話しただろう。両替商をやっている、おれの部下だ」
クレイオの胸元で月光を受けて光る真珠のネックレス。
ドフラミンゴは“人魚の涙”を見下ろしながら、静かにサングラスの奥で瞳を揺らした。