第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
シュガーが探し回って見つからなかったとすれば、あと考えつくのはあそこしかない。
クレイオは暗い階段を上り、2階にあるスートの間に向かった。
ハート、スペード、ダイヤ、クラブの四つの席があるその部屋に、ドフラミンゴはいるはず。
案の定、普段は幹部しか立ち入りが許されないその部屋のドアが少しだけ開いていた。
「ドフラミンゴ・・・?」
そっとドアを開くと、開け放した窓枠に座る大柄な男の影が伸びている。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・・・・
相手を呼び出そうとしている電伝虫の鳴き声。
ドフラミンゴはクレイオの存在に気が付くと、人差し指を口の前で立てて“静かにしてろ”というジェスチャーを送ってきた。
プルプルプルプル・・・
プルプルプルプル・・・・・・
それにしてもどこへかけているのだろう。
相手の出る気配がないのに、ドフラミンゴはずっと呼び出し続けている。
そんなに大事な用件なのだろうかと思っていると、ガチャリと相手の受話器の取る音がした。
『もしもし』
それは若い女の声。
ドフラミンゴは相手の女性の名前を口にしながら笑みを浮かべる。
「久しぶりだな。疲れた声をしているようだが、何かあったのか?」
きっと定期的に連絡を取る、親しい女性なのだろう。
声の微妙な変化から、相手の体調が分かるほどまでに。
たったそれだけのことなのに、クレイオの胸がちくりと痛む。
『私、疲れた声をしていますか?』
「おれの考えすぎならいいんだがな」
『いえ、大丈夫です』
相手の女性は心配をかけまいとしたのか、明るい声を出した。
『今月も質の良い宝石が入りました』
「そうか・・・最近は新世界を目指す海賊共が多いからな。あと、お前の“目”がいいからだ」
『・・・ありがとうございます』
ドフラミンゴはクレイオに向かって手招きをした。
そばに来い、ということなのだろう。
黙ったままそばに寄ると、ドフラミンゴはクレイオを抱き上げて膝の上に座らせた。