第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「不老手術・・・何故、永遠の命なんか欲しいと思うの・・・?」
───限りある命だから、人は救われる。
「“オペオペの実”の能力者は不老手術を施すことができる・・・その事実が知られているということは、これまで一人以上の能力者が誰かに永遠の命を授けたということでしょ・・・」
「何が言いたい?」
「もし不老手術を受けてしまったら・・・私はきっと、この世界から自分を隔離すると思う」
瞳を伏せながら語るクレイオを、ドフラミンゴは真剣な顔で見下ろしていた。
彼女と知り合って8年が経つが、自分の考えを口にすることは滅多にない。
もちろんドフラミンゴがそれを許さなかったのもある。
しかし、生まれ育った環境が影響しているのか、クレイオ自身が自分の考えを語るということに慣れていないようだった。
「何故、自分を隔離しようなどと思う?」
ドフラミンゴはクレイオの頬を撫でながら、次の言葉を促した。
「だって、最後は必ず一人になることが分かってるから。誰かを愛しても、その人が老いて死んでいくのを見守ることしかできない・・・悲しいだけじゃない」
隣のベッドで寝ていた姉妹達が、天竜人の声一つで次の日には消えている。
その事がただ、怖くて仕方がなかった。
最初から一人だったなら、“一人残される恐怖”も知らずに済んでいただろう。
もしかしたらこの世界のどこかには、終わりのない時間を過ごしている人がいるかもしれない。
誰も愛さないよう、誰とも出会わないよう、たった一人で孤独に・・・
だとしたら、その人はいったい何のために生きているのだろう。
「ドフラミンゴは耐えられるの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「貴方の大事なファミリーが死んで、たった一人になるということに」
ふと気づけば、先ほどまでクレイオの身体を締め付けていた糸は綺麗に消えていた。
代わりに、ドフラミンゴの大きな手がクレイオの顔を容赦なく鷲掴みにする。