第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「不老手術をすれば、能力者は死ぬ・・・だから、幹部の誰にも食わせるつもりはなかった」
ドフラミンゴに心酔する部下は多い。
上手く言いくるめれば、喜んで彼のために命を投げ出す者がいるだろう。
「オペオペの実を手に入れたら、永遠の命を得る前にまず、ローの命を救ってやるつもりだった」
そして、自分の右腕とし、ローとともに野望を叶える。
ハートの席にはロシナンテが座り、トレーボル、ディアマンテ、ピーカ、ヴェルゴ達とともにこの世界を壊すつもりだった。
“目に入るものを全部壊したい・・・!”
人格が崩壊した少年の言葉こそ、ドフラミンゴの野望。
ドフラミンゴはクレイオを抱き寄せると、ちょうど胸板のところにある頭に唇を寄せた。
「ローの野郎・・・死んでてくれりゃあ、殺す手間が省けたものを・・・」
「・・・どういうこと?」
怪訝そうに眉根を寄せたクレイオに、残忍な男は楽しそうに微笑む。
「ローがくたばっていれば、オペオペの実は世界のどこかで復活していた。今度こそそれを手に入れたら、それで済んでいた話だ」
「・・・・・・・・・・・・」
「だが、今もローが能力を持って生きている以上、あいつにはおれの為に死んでもらわなければならねェ」
“家族”と認めた人間を殺す・・・それは、この悪魔の心を傷つける唯一の行為。
「“ハートの海賊団”か・・・」
厚い胸筋の奥にある心臓の鼓動。
ドクン・・・ドクン・・・と、とても静かな脈を打っている。
それは気味が悪いほどに───
「“ハートの席”に座っていたコラソンへの想いでそう名乗っているのか・・・それとも、その席を空けたままにしていることを知ってて当てつけのつもりか・・・」
ドフラミンゴの額に青筋が浮かび上がる。
しかし、その口元には笑みが浮かんでいた。
「まァ、いい・・・“裏切者”として現れるなら殺すまでだ・・・我が弟のようにな」
もし、今ここに適当な人間がいたら、ドフラミンゴは躊躇なくその人間を切り刻んでいただろう。
飛び散る血と肉が、彼の心を慰めていたかもしれない。
それが叶わない今は、一切の“裏切り”を許さないとばかりにクレイオの身体に鋭い糸が絡みつく。
そして、ローに対する疑心と怒りをぶつけるかのように柔らかい肌を締め付けていた。