第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
ドフラミンゴとクレイオが王宮に戻ったのは、空に星が瞬く頃。
バサバサと音を立てながら二階の窓に舞い降りた王を、まるで見計らっていたかのようにモネが出迎える。
「おかえりなさい、若様」
「モネ」
ドレスローザに潜入していた頃とは違い、緩くウェーブがかかった髪を下ろしている彼女は、とてもミステリアスな空気を漂わせていた。
そして、ドフラミンゴの右腕に抱かれているクレイオをチラリと見てから柔らかく微笑む。
「悪い人。王位に就いたその日に国を空けるなんて」
「だから糸人形を残していったろ」
糸人形とは、ドフラミンゴの技の一つ“影騎糸”のこと。
糸によって本物と見分けがつかないほど精巧な分身を生み出す。
「でも、ラオGがご立腹でしたよ。貴方はもう国王様なのだから、立場をわきまえていただかないと」
「フフフ・・・わかった、気を付けよう」
ニヤニヤと笑っているドフラミンゴがどこまで本気なのか分からないが、モネもそんなことは承知の上といった様子だ。
肩をすくめながら、“しょうのない若様”と笑っている。
「もうすぐ夕食の時間です。若様が晴れてドレスローザの国王になったお祝いにご馳走を用意するってベビー5が張り切っていましたよ」
それに、新国王を祝うため、ドレスローザ中から人が王宮に集まってきている。
今夜は賑やかになるだろう。
「なんか下で国民どもがうるさかったな」
きっと、リク王をオモチャに変えてしまえば彼らの記憶からその存在が消え、ドフラミンゴはもっとラクに王座につくことができただろう。
わざわざ兵士と国民を傷つけ合わせずに済んだはず。
だが、わざとリク王を“裏切者”として仕立て上げ、彼への憎しみを国民達に植え付けたあたり、ドフラミンゴの残忍性が伺える。
何も知らず、何も覚えておらず、ドフラミンゴを祝福するために王宮の門に次々と花束を置いていく国民達の姿が空から見えた時は、クレイオの胸がズキズキと痛んだ。