第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「クレイオ、貴方も一緒にどう?」
「私は遠慮しておく」
「そう。じゃあ、料理は貴方の部屋に運ばせるわね」
ドフラミンゴは必ず、食事をファミリーと一緒に取る。
クレイオはどうしてもその輪の中に入っていくことができなかった。
自分が受け入れられていないことは肌で感じていたし、何より、ドフラミンゴをはじめとしたファミリーが皆恐ろしかった。
「クレイオ」
ドフラミンゴはファミリーの一員になりたがらないクレイオを責めはしない。
「食事をしたら風呂に入って待ってろ。あとで部屋に行く」
その代わり、彼女に一切の自由を与えない。
クレイオは王宮という大きなカゴに囚われた小鳥となっていた。
ドフラミンゴが先にダイニングルームへ向かったあと、モネはクレイオを振り返って微笑む。
「若様とどこへ行っていたの?」
「・・・南の方角よ。どこというわけでもなく、ただ空を飛んでいた」
「へえ・・・」
モネは窓のそばに落ちていたピンク色の羽を拾い上げた。
それはドフラミンゴのコートから落ちたものだろう。
大事そうに握りしめると、金色の瞳をクレイオに向けてくる。
「オモチャにしては、若様は貴方を大事にしているようね」
「・・・・・・・・・・・・・」
「ねェ、教えて。どうやって若様に取り入ったの?」
突然、二人の周りの空気が冷たくなった。
ヒュウと音がしたかと思うと、室内だというのに雪がちらつき始める。
それがモネの“ユキユキの実”の能力だと知ったのは、それから随分あとの事だった。
「モネ・・・?」
「言ったでしょ、若様がファミリー以外の女性をそばに置くのは珍しいって」
「・・・・・・・・・・・・」
「うふふふふ・・・本当に妬けちゃう」
無数の雪がクレイオの肌の温度を下げていく。
それ以上に、微笑んでいるモネを前にして感じる恐怖で、背筋が冷たくなっていた。