第7章 真珠の首飾りの女(ドフラミンゴ)
「───だから、どうした?」
青空から目を背けるように俯いたクレイオの顎に、大きな手が添えられる。
その手は冷たくも温かくもなく、ただ無慈悲にクレイオを自分の方に向けさせた。
「言ったはずだ、お前はおれの玩具だと・・・それ以上でも、それ以下でもねェよ」
ドフラミンゴは冷酷な笑みを浮かべていた。
「お前の身体を造ったのが天竜人だからどうした?」
「・・・・・・・・・・・・」
「その真珠がどのようにして生まれたかなど、おれにはどうでもいいことだ。世界で一番美しい宝石が、今はおれの手にあるということ・・・それが重要だからな」
その背中にある奴隷の証ですら、ドフラミンゴにとってはただの火傷の痕と変わらない。
むしろ、その紋章を持つクレイオを凌辱することで、遺恨ある天竜人を貶すことができて気分がいい。
「それに、おれはガキが欲しいとは微塵も思っちゃいねェ。おれの家族は、ファミリーの奴らだけでいい・・・」
理想を追い求め、自分から全てを奪った父。
正義を振りかざし、自分を裏切った弟。
血の繋がりなんて、何の価値も、確証もない。
「いいか、クレイオ。おれとお前の間に、お前の感情は必要ない」
「・・・・・・・・・・・・」
「洋服に文句を言う着せ替え人形があるか? お前はただ黙って、おれから与えられるものを身に付けていればいい」
その真珠は手始めだ。
これから宝石やドレスなど、溢れるほどの宝飾品を与えよう。
お前を世界一の女にするのは、天竜人じゃねェ。
このおれだ。
「結局、お前はどこにいたって、自らの意思で生きることはできねェのさ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「フッフッフッ、そう恨めしい顔をするな」
ドフラミンゴはクレイオの頬を一撫ですると、その奇抜なサングラスの奥にある瞳を僅かに揺らした。